雇用調整助成金の政策効果に関する研究

労働政策研究・研修機構(2017)

雇用調整助成金の政策効果に関する研究」労働政策研究報告書 No.187

 

(政策的インプリケーション)※下記ページより抜粋

  • 時系列分析(第2章(浅尾論文)、第3章(神林論文)、第4章(川上論文))により、雇調金の受給事業所は、非受給事業所に比べて、雇用が低調ないし減少で推移している中で、受給期間中を中心として、入職率を相対的に低く抑えるとともに、総じて離職率も相対的に低く抑えていることが指摘された。同時に、雇調金のネガティブな面として「受給終了後に大きな離職が生じている」、「受給事業所の廃業が受給終了後に集中する」ことが指摘された。この指摘は、「雇調金はいたずらに無駄な雇用を温存する」、更には「いわゆるゾンビ企業の延命に手を貸している」、「産業構造の転換を遅らせている」などの批判に通じる面もあると考えられるが、むしろ雇調金によって雇用失業情勢の最も厳しい時期を後ろに分散化させるとともに、雇用失業情勢が少し落ち着いた状態で、円滑な再就職を促進する効果を持つという前向きの効果として捉えることが適当であるとしている。
  • 計量モデル分析では、第5章(有賀・郭論文)と第6章(何論文)では、雇調金の受給は、入職率についてマイナスの影響がみられた一方、離職率に関して、受給事業所と非受給事業所の間には有意な差が観察されなかった(離職率に影響を与えていない)。一方、第7章(張論文)は、雇調金の受給は離職率を下げ、離職者数を減少させたという結果が得られている。雇調金は不況時における一時的な雇用維持を目的としており、雇調金の離職率に与える影響の分析は重要であるので、より精緻な分析に向けて引き続き検討する必要があろうとしている。

 

(詳細はこちら)

http://www.jil.go.jp/institute/reports/2016/0187.html