企業の成長阻害要因としての中小企業政策

鶴田大輔(2017)

「企業の成長阻害要因としての中小企業政策」

 

(概要)

  • 企業は法定中小企業の要件を満たすために、資本金のレベルを維持し、企業成長を遅らせる傾向がある。これらは手厚い中小企業政策はかえって中小企業政策の目的の1つである、企業成長を遅らせる一因になることを示唆する。今後は法定中小企業から卒業した企業に対し、何らかのベネフィットになるような政策を講じることが必要であろう。
  • また、公的なサポートが必要とならない企業に対する政策を見直していくべきである。たとえば、金融機関とのリレーションシップを十分に構築し、資金調達をスムーズに行える中小企業に対しては徐々に保証割合を下げる、といった措置も必要である。

 

(詳細はこちら)

www.rieti.go.jp

経営教育に向けた起業体験プログラムの開発と教育効果の検証―千葉市との地域連携事業から―

樋口大輔(2017)

「経営教育に向けた起業体験プログラムの開発と教育効果の検証―千葉市との地域連携事業から―」

 

起業家教育の一環として、小学生などの子どもに起業体験をさせる事業・活動は全国で数多く実施されていますが、その効果については案外曖昧なのでは。。。ということで、その効果の可視化を試みた研究をチェック。

 

http://www.iic.tuis.ac.jp/edoc/journal/ron/r20-2-1/index.html

雇用調整助成金の政策効果に関する研究

労働政策研究・研修機構(2017)

雇用調整助成金の政策効果に関する研究」労働政策研究報告書 No.187

 

(政策的インプリケーション)※下記ページより抜粋

  • 時系列分析(第2章(浅尾論文)、第3章(神林論文)、第4章(川上論文))により、雇調金の受給事業所は、非受給事業所に比べて、雇用が低調ないし減少で推移している中で、受給期間中を中心として、入職率を相対的に低く抑えるとともに、総じて離職率も相対的に低く抑えていることが指摘された。同時に、雇調金のネガティブな面として「受給終了後に大きな離職が生じている」、「受給事業所の廃業が受給終了後に集中する」ことが指摘された。この指摘は、「雇調金はいたずらに無駄な雇用を温存する」、更には「いわゆるゾンビ企業の延命に手を貸している」、「産業構造の転換を遅らせている」などの批判に通じる面もあると考えられるが、むしろ雇調金によって雇用失業情勢の最も厳しい時期を後ろに分散化させるとともに、雇用失業情勢が少し落ち着いた状態で、円滑な再就職を促進する効果を持つという前向きの効果として捉えることが適当であるとしている。
  • 計量モデル分析では、第5章(有賀・郭論文)と第6章(何論文)では、雇調金の受給は、入職率についてマイナスの影響がみられた一方、離職率に関して、受給事業所と非受給事業所の間には有意な差が観察されなかった(離職率に影響を与えていない)。一方、第7章(張論文)は、雇調金の受給は離職率を下げ、離職者数を減少させたという結果が得られている。雇調金は不況時における一時的な雇用維持を目的としており、雇調金の離職率に与える影響の分析は重要であるので、より精緻な分析に向けて引き続き検討する必要があろうとしている。

 

(詳細はこちら)

http://www.jil.go.jp/institute/reports/2016/0187.html

日本企業における人材育成・能力開発・キャリア管理

労働政策研究・研修機構(2017)

「日本企業における人材育成・能力開発・キャリア管理」労働政策研究報告書 No.196

 

(政策的インプリケーション)※下記ページより抜粋

  • 職場の管理職の育成・能力開発面での役割強化や、管理職と企業(人事部門)との連携強化に向けた政策的支援策を構想していくことが必要であろう。具体的には、育成・能力開発に関わる管理職向けの教育研修プログラムに対する金銭的・人的支援や、職場での育成・能力開発に関わる情報収集や評価のために企業が行う体制整備に対する支援(ノウハウの提供や、試行的プログラム実施のための金銭的支援など)などが考えられる。
  • 管理職自身が部下の育成・能力開発により時間を割きたいと考えているにも関わらず、それができていない現状から、管理職を有効にサポートできる「キャリア・コンサルタント」のより一層の活用が求められ、それに向けては、①企業内キャリア・コンサルタントの増加に向けた、養成プログラムの開発・実施、②企業内キャリア・コンサルタントと管理職との連携に関する好事例の収集・分析とその普及、といった政策的支援が考えられる。
  • 今後より重要性が増すとみられる、働く人々が各自の専門性を高めていくような能力開発の推進にあたっては、働く人々が自らの能力開発に自主的に取り組むことができる環境の整備が必要であることから、この環境整備に企業がより取り組みやすくなるように、また職場において整備された制度などがより活発に運用されるように、能力開発のための様々な労働時間上の措置(残業免除、能力開発休暇など)の必要性を訴えたり、強制力を高めたりすることが求められよう。

(詳細はこちら)

http://www.jil.go.jp/institute/reports/2017/0196.html

研究開発補助金、研究開発連携と吸収能力の関係の評価:スペインの製造業に関する調査

Manuel Guisado-González, Jennifer González-Blanco, José Luís Coca-Pérez, Manuel Guisado-Tato(2017)

「研究開発補助金、研究開発連携と吸収能力の関係の評価:スペインの製造業に関する調査」

 

(概要)

  • 研究開発連携協定の締結に伴う公的補助金の受給は、研究開発連携や研究開発補助金より、生産性に与えるインパクトのほうが小さい。これはEU諸国におけるイノベーション推進ツールとしての補助金をかけた研究開発連携の有用性に疑問を呈するものである。

 

(詳細はこちら)

link.springer.com

成功事例は開発援助に有効か : 負の遺産に未来あり

麻田玲(2017)

「成功事例は開発援助に有効か : 負の遺産に未来あり」

 

開発援助という文脈での議論ですが、地域産業政策にも同様のことが言えるはず。負の経験を共有し、失敗を活用することの重要性について再考する機会に。

 

(詳細はこちら)

http://hdl.handle.net/2261/72201

研究開発政策の長期的な成長効果

Antonio Minnitia, Francesco Venturini(2017)

「研究開発政策の長期的な成長効果」

 

(概要)

  • 米国の製造業データを用いて、公共政策が長期的に事業の研究開発に及ぼす長期的な影響を評価・分析する。
  • R&D税額控除政策は、長期的な視野に立って生産性成長率を高めていることが示唆される。例えば、研究開発税額控除を10%増やすと、労働生産性の成長率は年率0.4%上昇する。

 

(詳細はこちら)

http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0048733316301950